財産分与

IMG_7028.jpg財産分与とは、離婚にあたって、夫婦の間の財産をお互いで分けることです。

結婚後、多くのご夫婦が、車を購入したり、買い替えたり、住宅を購入したりしますよね。離婚にあたっては、これらの財産を分ける、つまり清算する必要があります。

したがって、たとえば、結婚前にそれぞれががんばって貯めていた預貯金や、結婚前後にかかわらず、自分の親などから相続によって得た財産は含みません。

逆に、たとえ夫名義の預貯金や保険金、車、土地建物であったとしても、あるいは、結婚後の生活の中で、夫婦の収入をやりくりして得た財産であれば、財産分与の対象となります。
専業主婦であったとしても、夫を支え、家庭を支えてきたわけですから、財産分与にあたっては、5:5つまり2分の1をもらう権利があります。

財産分与の対象となる財産の範囲は?

財産分与の対象は、結婚「後」に、夫婦が協力して築いた財産です。

「マンションは夫だけの名義だから夫のものですか」「車は妻名義なので、妻のものになるのですか」といったご質問を受けます。

しかし、結婚後に購入したものは、夫婦で協力して購入したものとされますので、名義が夫か妻かは、財産分与にあたって問題になりません。

また、「私だけが働いていて資産を形成できたのです。相手の協力はありません。」とおっしゃる方がいますが、法的には、配偶者が家事や育児をおこなってきたという協力によって、他方配偶者が給与を得たり売上を上げて資産を形成できたと考えます。

このように、夫の名義であれ、妻の名義であれ、夫婦が協力して築いてきた財産が財産分与の対象となります。これを「共有財産」と言います。

夫婦が協力して築いたとは言えない資産とは?

逆に、夫婦が協力して築いたとは言えない資産、例えば、相続して得た遺産や、結婚前から持っていた貯金や不動産は、財産分与の対象になりません。これを「特有財産」と言います。

財産分与はいつまで請求できるのか

離婚が成立した時から2年以内に請求する必要があります。離婚前に話し合っておくのが望ましいのですが、配偶者の暴力やその他の事情により、急いでとりあえず離婚だけした、というような場合、2年以内に請求しなければ権利を失います。

財産分与の種類

法的には、財産分与には、

①清算的財産分与

②扶養的財産分与

があり、慰謝料的要素を含む場合もあります。

このうち、主たるものは①の清算的財産分与です。財産分与は、離婚にあたって、夫婦が協力して築いた資産を清算することを主目的とするからです。では、清算的財産分与について、具体的に見てみましょう。

財産分与の割合

原則2分の1とされています。「俺の方が稼いでいたのに」「私の方が仕事もして家事も育児もしていたのに」といったお声もよく聞きますが、法律の世界では、夫婦はお互い対等に助け合っていた、協力していた、とみなしますので、折半が原則です。

例外的に、一方配偶者の並々ならぬ努力や才覚によって財産が増えたといえる場合に、6:4の割合を認めた裁判例もあります。しかしこれは、医師の事例でかつ特殊な事案でしたので、多くのご夫婦が5:5と考えていただければ良いでしょう。

財産分与の方法

財産は、いつの時点の財産を分けるのか(基準時の問題)

夫婦の協力関係が失われた後に形成した財産は清算する必要がないです。

一番分かりやすいのは別居時点です。別居後に得た給料や、別居後に貯めた貯金は、相手配偶者の協力があったとは言えないからです。このように、いつの時点の財産を分けるのか、という問題のことを、「財産分与の基準時」と言います。

自宅や貯金、保険をどうやって分けるのか

自宅不動産

自宅不動産は、売却するのであれば、売却益(売った代金から住宅ローンと仲介手数料等を払った残りの金額)を夫婦で折半するのが通常です。

どちらか一方が住み続ける場合は、家を出た配偶者から買い取る必要があります。そのため、売った場合に出るはずの利益(売却益)の半額を開いて配偶者に支払うこともあります。

「売った場合に出るはずの利益」は不動産業者に査定額を出してもらい、それを参考にして決めます。

もっとも、民法は、実は、2分の1にしましょうといった分与の割合、方法一切書いていません。そのため、家に住み続ける側が対価を支払わずに自宅を取得することも、相手配偶者が合意していればもちろん可能です。

ただ、自宅がオーバーローンのこともあるでしょう。その場合は、売却することも難しく、査定額もゼロですので、自宅は財産分与の対象とはなりません。

預貯金

準時(多くは別居時点)での残高を夫婦双方で開示し合って明らかにし、折半します。

※別居の際に、家計から持ち出した貯金はどうなるのか

2分の1以下の持ち出してあれば、違法性はなく、財産分与のときに話し合いで解決することが多いです。時々、お金を持ち出された、妻(夫)は泥棒だ!とおっしゃる方や、逆に、別居の時にお金を持ち出して良いのかどうか、後で泥棒扱いされないか、とのご質問を受けますので、参考にしてください。

子ども名義の財産はどうなるのか

お子様名義の預貯金は、ケースバイケースです。具体的には、夫婦が子どもの将来の学費のために貯めた預貯金は、子供の学費のためではあるのですが、夫婦の家計から支出しており、財産分与の対象となるのが通常です。

他方、子ども自身がアルバイトをして貯めたお金や、子どもがもらったお年玉のみで貯まった預貯金などは、対象とならないと考えられます。

保険(生命保険、学資保険、医療保険など)

掛け捨ての保険は財産分与の際に問題になりません。しかし、貯蓄型の保険は、預貯金と同じように資産となりますので、財産分与の対象となります。

具体的な分け方を説明します。

基準時(多くは別居時点)で、もしその保険を解約したらいくら戻ってくるのかを、保険会社に問い合わせて調べます。これを「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」と言います。保険会社は、2週間程度で葉書や書面で金額を郵送で教えてくれますので、額が分かれば、その金額を財産分与の対象とします。

子ども名義の学資保険はどうなるのか

預貯金の場合と同じように考えます。夫婦の家計から保険料を支出していたのであれば、財産分与の対象となり、折半する、ということになります。しかし、不動産の項でお話しした通り、法律が2分の1で分けなさいと決めている訳ではなく、夫婦で合意すればどのような分け方も可能です。よって、子どもの将来のために、分けずに、子どもの親権者になる側がそのまま取得することも、よくあります。

退職金

財産分与の際に忘れてならないのが退職金です。既に退職して受け取っている場合はもちろん、まだ退職しておらず、現金として受け取っていないとしても、財産分与の対象となるのです。

既に受け取っている退職金の場合は、基準時(別居時点)で残っている金額が対象となりますので、預貯金の財産分与と同じです。

将来の退職金の場合は、将来支給される可能性が高い場合に、今退職するとしたらいくらの退職金が出るのか、を会社や組織に問い合わせて金額を出し、その金額のうち、婚姻期間(同居期間)に相当する金額を算定したものが財産分与の対象となります。

22歳で就職、30歳で結婚、同居開始、50歳で離婚を前提とした別居を開始、定年退職は65歳だが、50歳で退職するとしたら、退職金が1000万円の場合、財産分与の対象となる金額は以下のように計算します。

1000万円は、就業期間である22歳から50歳までの28年に相当する金額です。婚姻期間は30歳から50歳までの20年間ですので、1000万円の28分の20である、714万円が財産分与の対象となります。これを折半すると、357万円ずつ、となります。

借金は財産分与の対象となるのか

では、相手配偶者が負っている借金も離婚の際にこちらで負担しなければならないのでしょうか。あるいは、家計のために借金をした場合、相手配偶者にその半額を負担させることはできるでしょうか。

民法はこれについて明確には定めていません。

裁判所の考え方は、財産分与はあくまで「資産」を清算するものと考えており、債務(借金)については、名義人のものであり、相手に負担させることには消極的です。

しかし、生活のためにやむなくした借金まで、夫婦の一方だけが離婚後も背負い続けねばならないのは酷です。裁判例の中には、「債務についても夫婦共同生活の中で生じたものについては、財産分与に当たりその債務発生に対する寄与の程度に応じてこれを負担させることができる」としているものもあります。

財産分与の手続の流れ

協議離婚の場合は、それぞれが財産の資料を出し合い、財産の一覧表を作成し、分与額を決めます。

財産分与で大切なことは

対象となる財産をもれなくリストアップする

相手に隠し財産がないか、こちらが把握していない預貯金口座や、生命保険はないかなどに注意が必要です。

離婚後の生活を思い描きながら、必要な財産を考えていく

財産分与の対象は、預貯金や現金だけではなく、住宅ローンの残ったマンションや、オートローンの残った車、子供の学資保険など様々です。
家に住む必要があれば、住宅ローンをどうするか、家の名義をどうするかが大事になりますし、子供名義の学資保険を継続したければ、契約者を夫から妻に変更するなどの手続が必要となります。
このように、単に、半分に分ける、というわけにいかないのが、財産分与です。財産分与こそ、専門家で経験豊富な弁護士の意見を聞きながら、丁寧に考えていく必要があります。また、自分に不利な分与内容とならないよう、交渉していくことが大事です。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼すると、財産資料のチェックや一覧表の作成を全て任せることができます。また、相手が預金や株式、保険を持っているはずなのに、それを出してこない時に、銀行名や証券会社名、保険会社名さえ分かっていれば、調査をすることもできます。

さらに、これまで述べた以外にも、財産分与の対象となるのか、ならないのかや、財産の査定方法については、さまざまな考え方、法的問題があります。よって、弁護士に相談をすることが、財産分与を正確に行い、得られるべき利益を得るために、また、失わなくてよい財産を守るために必要です。

当事務所では、財産分与について多数の解決事例があり、ご相談者のご要望を聞きながら、ひとつひとつの財産について、その特徴を踏まえて相手と交渉いたします。そして、名義変更や解約手続について、相手が信頼できない、という場合には、手続への立ち会いなども行っており、ご依頼者の財産が万全に守られるようサポートしております。